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未開社会 1. 未開人の生活様式
- 自然に散じて暮らす未開人の主体性は, 凡そ仮想主体性 (無意識的摂理主体性) のレヴェルにある.廳
- 本能に即した生活を淡々と営んでいるので, 彼等を観察しているとヒトがサルに近しかった頃の様子を窺い知ることができる.靄
- 大人も子供のような印象を受けるが立派に自立した存在と言える.黌
- 文明人に見られる脂ぎった偽自立症状もなく, 行動様式は非常に単純である.讓
- 行動は衝動的で感情に対しての抑制力が乏しく保守的だが, 仲間だと認識すれば非常に友好的となる.鑪
- 彼らの生活圏にも自己主体的な物質文明人の手が及び, これまでにも凄惨な虐殺・支配, また文明人の持ち込んだ細菌による疫病などで多くの部族が消滅, または自己主体的な社会構造に組み込まれてきたが, 世界各地には, 未だ多くの未開部族が何ら生活様式を変えることもなく動物に近しい生活を営んでいる.鑼
- 未開人の生活が不幸なものであるとの判断は, 物質文明人の軽い錯誤であり, 文明的な生活が煩わしいという理由で文明化を拒否する未開部族も多い.鱸
- 彼等には, 主体的な自由を拡張した物質文明への憧れもあるが, そこに至る過程で本能的な充足が得られなくなるとの懸念もある.驤
- 無意識的摂理主体は, 本能的な充足が得られない環境での適応性が低いので, 価値不全症候群への罹患を恐れて文明化を拒否することになる.黶
- 動植物の多い地域では, 狩猟採集社会が牧畜農耕社会に移行し難かったのも, 牧畜農耕が狩猟採集に比較してより複雑で長時間の労働を必要としたからである.鼈
- 狩猟採集社会の労働は, 日に1~2時間だが, 牧畜農耕社会では, 3~5時間を必要とする.鑽
- 牧畜農耕社会から工業社会への移行は, 更に労働を複雑かつ長時間なものとするため, 文明人の労働時間は, 今や8時間を超過しようとしている.驟
- 資本主義に組み込まれている牧畜農耕社会では, 日に8時間労働の農場も珍しくない.齲
2. 未開人の心性
- 本項では, 未開人の心性を, アニミズム, トーテミズム, シャーマニズムから論じる.鷹
- 未開人の心性は, 幼児の心性と重なる部分が多い.鱸
2.1. アニミズム
- アニミズム (Animism) の名称は, 気息や霊魂を意味するラテン語のアニマ (Anima) に由来する.黷
- アニミズムとは, あらゆる存在 (生命, 非生命) を意思ある (霊性の宿る) 生命と解釈する状態をいう.糶
- 無意識的主体は, 先ず自己を意思ある生命であると認識し, 他者をも意思ある存在であると認識して疑わない.靃
- ゆえに, 無意識的主体にとっての環境としてある諸構成要素は, 全て主観的に客体化され得ぬ主体的な意思ある生命として認識される.齶
- 無意識的主体は, 常に傍らに意識的な生命性を求めるもので, この「森羅万象が生き生きと交わり, 自己もその運行に散じている」との, あらゆる対象の生命解釈と全体帰一による一体感が彼を孤立させない.覊
- 意思また意識は, 凡そ霊性 (魂; 神) と解釈され, あらゆる存在に霊性が宿るとのアニミズム的な宗教観は, あらゆる存在を意思ある生命的な存在と認識する無意識的主体性の認識特性から発現している.躪
- 例えば, 未開人がモノ存在にも意識がある (霊性が宿る) と考えるのも凡そこの認識特性による.鑾
- 彼等は, 不可視的な意識 (霊性) を, 物質存在それ自体とは分立的に「ある」ことのできる存在と解釈する傾向にある.靆
- 文明人にとっても意識とは, やはり不可視的な事象であり, 解剖された脳の機能局在を説明されても容易に納得には至らないが, 容易に納得できてしてしまうのは, 純粋な知感覚性を鈍磨させた意識的主体の合理的な判断による.艷
- 意識 (霊性) とは, 前述のように身体 (神体) に対して分立的な解離特性を備えた着脱可能な存在と解釈されていたので, 神降ろし, 生霊, 魂呼び, 魂迎え, 魂送り, 魂結び, 人魂, 脱魂, 憑依, 降霊, 除霊などの発想が生まれた (魂合う, 魂打ち, 魂消る, 魂尽く, 魂を入れ替える, 魂を冷すなどの言葉からも説明できる) .鱸
- アニミズムに於いては, 身体 (神体; もの) とは意思 (霊性; たま) の宿り場であり, 身体の崩壊を持って意思は身体を離脱して別の宿り場, また意思の集う場に向かうとの解釈が一般的である (例えば, 神道に於いては, 人間が死亡するとその霊魂は個性を喪失しながら祖霊と融合し神々の中に加わると解釈される) .顳
- つまり, 「もの」は「たま」の容器であり, 「彼の世」の「たま」が「此の世」の「もの」に入り込み, 「たま」と「もの」は「此の世」で協働し, 再び「たま」は「もの」から出て「彼の世」に戻るとの循環的な解釈が為されている.讒
- アニミズム的な社会では, 「たま」と「もの」との合一を表現した儀式が広く観察される (例: 通過儀礼, 疾病治療) .糶
- また, 精神疾患は, 凡そ霊性の異常と解釈され, 宗教的な治療の対象とされる.鑽
2.2. トーテミズム
- トーテミズム (Totemism) の名称は, アメリカ・インディアン諸族の作り崇めるトーテム・ポール (Totem Pole) に由来する.鑾
- トーテムは, 自集団 (自己) の自己組織化の向上, また他集団 (他者) との差異化による自己組織化の向上を図るためのシステムである.鸙
- トーテミズムの発現には, 対象を表象 (隠喩) 化してその言語記号を所有できる水準にまで主観機能が発達していることが条件となる.鱧
- 具体的には, 自集団を表象する存在をトーテムとして崇拝し, 別のトーテムを冠して集団化している他集団との差異化を図ったり, トーテムを持たない他集団の中で自集団を優位化する.讒
- 表象として選ばれる存在は, 自然界のあらゆる事象 (動植物, 鉱物, 天候, 生理現象など) であり, 纏まった一貫性は認められない.鬣
- しかし, 仮想主体性では, 高次概念 (真, 善, 美など) を言語・記号化する能力は低く, 凡そ具象的な自然現象をトーテムとする.齶
- 国家, 教団, 会社, 暴力団, 一族, タレント, スポーツチームなどが, それぞれ自己を表象する記号を掲げて堅牢に自己組織化している様子に同じ.鬢
- 凡そ男児が虎や龍, 炎, 雷などを好むのは, それらの猛々しい自然物の特性を自己内に所有しようと考えるからであり, 女児では花や小鳥などの可愛い小動物の特性を所有しようと考える傾向にある.齲
- これらは, 概念的に言語記号化され, 自己を表象する言語記号的存在となり, それが価値・理念となり, やがて信仰となる.釀
- 行動は, 主観の所有した表象としての言語記号的特性を帯び始め, 例えば, 風林火山の旗を背負えば, 其の疾きこと風の如く云々と自身の行動も表象に追従したものとなる.顰
- 主観は, 所有の弁証法を行使する言語記号の体系なので, 行動の前駆的な価値・理念としてこのような表象的言語記号を所有する.羈
- また, 主観は, 本能とのフィードバックを喪えば, 価値判断なき概念質量としての砂上楼閣に過ぎず, 行動理念を外在的存在の特質から吸収して自身の行動理念に据える傾向にある.驤
- トーテミズムの場合は, 自己の自由の拡張を齎す表象的言語記号が産出されているのでやや自由拡張症候群ぎみだが, 自己の自由を損傷する言語記号が認識された場合は, 自由損傷症候群となり, 未開地域では, 原始ヒステリアなどとして発現する.癲
- 日本では, 全国に広がる氏神信仰が凡そトーテミズム的構造を示し, 自然物を氏神として崇拝することで, その氏神から恩恵が齎されるものと考えていた.魘
- 後に周縁的に散在する氏神信仰は, 中心から波及した神道の内部に吸収され, 凡そ氏神も神道の神霊の1つと考えられるに至った.靈
- 刺青なども表象を身体に刻印したものであり, 刺青を他者に入れることで自分が他者を所有している優越感を得る.齲
- 対して, 他者に刺青を入れられ所有されることを喜ぶならば, 凡そ倒錯症の奴隷的心理状態であり, この2つは自由拡張症候群を背景とする.艷
- 社会・教団では, 組織の正会員に迎え入れられる際に, 刺青こそ入れられないものの制服・法服・資格などが組織を表象する記号として支給され, 組織の一構成要素であることを認識させられる.讙
- 例えば, 学生服は学生の表象であり, 学生服を見れば○○学園の一構成要素であることが解り, 学生服を着ている者は, 服装倒錯者などでない限り学生として行為している.驩
- つまり, 主体は, 学生であることを自発・他発的に肯定することとなり, トーテミズムでも同様にトーテムを崇拝することを自発・他発的に肯定することとなり, これが愛着, 崇拝にまで高められる.顰
- 自己主体は, 所有され, 所有することを快楽とする特性を持ち, また純粋に他者からの自律の承認を快楽とするので, こうした通過儀礼を喜ぶが, 個即全とした昆虫, 動物, 精神主体などには, こうした儀式のありがたさが感じられない.臠
- 凡その部族は, トーテムをアニミズム的に解釈しており, トーテムとして表象化した存在の霊的存在性が, 自身に恩恵や災厄を齎すと考えている.麟
2.3. シャマニズム
- シャマニズム (Shamanism) の名称は, ツングース系諸族の呪術師を意味するサマン (Saman) に由来する.欟
- 中国では, シャマンを巫 (女性) , 覡 (男性) といい, 日本の巫女などもこれに由来する.鷹
- 「巫」とは, 「工+人二人」で両手で玉を神の前に捧げて神意を求めるの意で, 「覡」は, 神意を求め見るの意である.鑰
- シャマニズムを採用する集団では, シャマンと呼ばれる仲介者を通じて, 霊的な存在の声を聞き, その声に従って執政・災厄・未来などへの対処を行なう.羈
- シャマンは, 環境と系 (自集団) を仲介して系の葛藤を解消する, 境界的な系の構成要素である.衢
- また, シャマンは, 系が自律 (存続) の葛藤 (崩壊性) を抱えることで, その葛藤を解消するべく自発・他発的に発現する傾向にある.齷
- シャマンは, 凡そ系の葛藤を解消する生贄的な存在ゆえに, 災厄を代替的に被ったり, 葛藤を解消できない場合には責任を執らなければならなかった.觀
- 古代社会では, シャマンが統治者である場合が多く, 日本の女王卑弥呼や天皇などもシャマンの類であり, 崇拝する霊的な存在の表象的な存在, また霊的な存在に近しい存在などとして敬われた.鬣
- 航海が成功すると褒美を貰え, 失敗すると処刑されるといった渡航専用のシャマンも存在した.鱠
- こうした葛藤解消システムに全ての災厄を代償させて, 自分は災厄から逃れようという心性は, いつの時代も変わることなく, 現代に於いても諸々の道具が人間に代わって災厄を処理している (シャマンとは, 葛藤を解消する道具機能である) .鑿
- シャマンは, しばしば他者の疾患を治癒することで, 自己の疾患を治癒する疾患前提的な存在でもあり, その多くは, 青年期に何らかの精神疾患を発病している傾向にある.顱
- キリストやマホメットなどもシャマンに若干類似しており, 「神の啓示を受けた」という証言は, 精神病者に発現する世界救済妄想とも考えられ, それに至る前段階には, 世界没落妄想が体験されているはずである.黌
- キリストが悪魔と対峙する話なども, 同様に根本情態性の背進了解に於ける妄想・幻覚と考えられる.讓
- 仮想主体性である古代人は, その主体的な脆弱性から容易に主体を崩壊させ, 頻繁に神や悪魔を妄想・幻覚として認識していたことが予測される.釀
- また, キリストを始めとするシャマンは, 重度の根本情態性反応を被りやすい時代・環境に身を置いていたことが, その資質を獲得することに繋がったものと考えられる.钁
- シャマンには, 召命型, 世襲型, 修行型の3つの発現形態がある.齷
- 召命型は, 霊的な存在に強制的に召命されてシャマンとなるタイプである.鑰
- キリストやジャンヌダルクのように「神からの啓示・使命を受けた」という者などが該当する.讖
- 精神病や強い精神自由損傷症候群に罹患した経歴を持つ者が多く, 前述の2者も同様に民族の危機を直覚して発病に至っている.鼈
- 世襲型は, 代々シャマンの家系で先代を継承することでシャマンとなるタイプである.顱
- シャマンの資質を強く保持する傾向は, 精神疾患が遺伝・環境的な伝播性を持つ傾向に同じであり, 霊的な存在の信仰を教え込まれた存在は, 霊的な存在性に敏感となり易い.黷
- 修行・学習型は, 何某かの目的により自発的にシャマンになるために学習を積みシャマンとなるタイプである.顴
- その目的には, 力への渇望や召命型と同様の社会的な葛藤の解消などと様々である.顳
- シャマニズムでは, 霊的な存在と交渉するので, アニミズムやトーテミズムとも親和的であり, この3つの形態は並存し得る.讙
- シャマンが霊的な存在と交流する際には, 凡そ2つの形態がある.纛
- 脱魂型 (エクスタシー・タイプ; Ecstasy Type) では, シャマン自身が他界の霊的な存在を訪問して, 託宣を持ち帰る.黷
- 憑霊型 (ポゼッション・タイプ; Possession Type) では, シャマンが他界の霊的な存在を召喚して, 自分に憑依させて託宣を述べたり, 直接対話して託宣を賜る.靆
- 霊的な存在との交流は, 常態意識が変異したトランス状態に於いて可能となる.鑽
- 仮想主体性は, 主体が強固に定立していないことから, 環境からの影響に繊細に反応し, 他者性に感応することで容易にいかにも他者らしい主体を表出することができる.釀
- これは, 幼児が仮想現実の物語世界に深い没入傾向を示し, 現実に戻っても没入感を残遺させている様子から容易に想像できる.顴
- 主体性が固定的に定位して環境からの影響を受け難い状態では, 暗示的な誘導から半覚醒 (トランス) 状態に至ることが難しい.驟
- ゆえに, シャマンには, 若い女性や子供が多く, 男性や老人は少なく, 加齢に同期して霊力も減衰する傾向にある.衢
- 精神疾患に罹患して主体性崩壊が容易に揮発される疾患者の場合は, 老若男女問わず妄想・幻覚の中で霊的な存在に遭遇し, 託宣を持ち帰る場合がある.囑
- 半覚醒状態とは, 凡そ妄想・幻覚を見ることできる状態のことであり, シャマンが半覚醒後に朦朧・昏倒するのは, 重度の主体性崩壊, また, 過激なトランスに伴う交感神経の過剰亢進によるものと考えられる.鑾
- シャマンの半覚醒状態は, 暗示的な誘導や薬物 (例: 幻覚キノコ, ガンジャ, ソーマ) の服用によって揮発されるものだが, 解離性障害などとの親和性も強く, この状態の間も周囲からの刺激や問いかけには反応することができる.讖
- 何らかの方法で妄想・幻覚を揮発できるならば, シャマンとしての資質がとりあえずはあると言える.蠹
Date.2008.01.14 |